革靴の紐を通す部分のことを「羽根(ハネ)」と呼びますが、羽根には「内羽根(ウチバネ)」と「外羽根(ソトバネ)」の2種類があります。
「高級な買い物だから失敗したくない…」「内羽根と外羽根はどこが違うの?」「結局どちらがおすすめ?」と迷っている方も多いはず。
そこで本日は、
- 内羽根と外羽根の違い
- 利用シーンに合わせた選び方
- 羽根の開き具合について
- 初めての革靴ならどちらがおすすめ?
という4つのポイントを紹介していきます。
パッと見だと似ているように見える「内羽根」と「外羽根」ですが、ルーツの違い・フォーマル度の違い・利用シーンに合わせた使い分けも知っていただけると嬉しいです。
内羽根と外羽根の違いを知ろう
まずは、内羽根と外羽根の違いは、次のようになっています。
【内羽根の特徴】
- 羽根が甲の革に縫い込まれている。
- 紐を解いても羽根がピタッと閉じている。
- 脱ぎ履きはしづらい。
- 品があり、スマートな印象。
【外羽根の特徴】
- 羽根が甲の革を覆うように縫われている。
- 紐を解くと羽根が開く。
- 脱ぎ履きがしやすい。
- 装飾感があり、アクティブな印象。
このような特徴をもつ内羽根と外羽根について、それぞれおすすめな利用シーンも紹介します。
利用シーンに合わせた選び方
一般に、内羽根のほうが外羽根よりもフォーマルだと言われています。
そのため、
- 冠婚葬祭や式典などかしこまった席では内羽根
- カジュアルやビジネスなど活動的な場では外羽根
と、TPOに合わせて使い分けるのがおすすめです。
冠婚葬祭・式典などフォーマルなシーンに間違いなしの内羽根

黒の内羽根、ストレートチップ
靴の種類の中でも最も格式が高いと言われているのが内羽根の短靴で、イギリス王室がルーツとなっています。
また、その中でも一番格式が高いとされているのが、「黒」の「ストレートチップ」のもの。(上に掲載している写真のもの)

内羽根、黒のクォーターブローグ。ストレートチップよりもフォーマル度が落ちる。
同じ内羽根の短靴でも、茶色やブローグ(飾り穴)がついているものはフォーマル度がやや落ちるため、TPOを考えて選ぶように気をつけましょう。
内羽根の歴史や特徴をもっと詳しく
内羽根のルーツは、1853年にイギリスのヴィクトリア女王の夫、アルバート公爵が考案し、ミドルタイプ(ブーツタイプ)の内羽根の靴を作らせたのが起源といわれています。
内羽根の靴は「バルモラル」と呼ばれますが、アルバート公爵が内羽根の靴を履いてスコットランドの別荘であるバルモラル城でリゾートを楽しまれたことが由来とされています。
内羽根は、羽根のパーツが甲側のパーツと一緒に内側に縫い付けられています。
そのため、履き口が開きにくく足入れがしにくいですが、紐を締めると非常にスッキリとした上品なスタイルとなります。
羽根の根元の部分をよく見ると、先端が太めの糸で留められています。
この部分を「閂(かんぬき)」「シャコ止め」と呼びます。
履く時や歩く時に負荷が一番かかる部分なので、補強のためしっかりと縫い合わされています。
外回りでたくさん歩く・脱ぎ履きが多い人には丈夫な外羽根
頑丈で動きやすい外羽根は、営業など外回りでたくさん歩く方、脱ぎ履きが多い方におすすめです。
外羽根のルーツは「軍靴」です。
たくさん歩いてもヘタりにくい、丈夫で動きやすい形状となっています。
スマートな内羽根と比べると、見た目からも「タフさ」「アクティブさ」など活動的な印象を与えることができます。
また、外羽根の中でも黒のストレートチップがフォーマル度が高く、茶色やブローグ(飾り穴)がつくと、よりカジュアルになります。
ビジネスシーンで履く場合でも、業種や場に合わせた色とデザインを選ぶ必要がありますね。
外羽根の歴史や特徴をもっと詳しく
外羽根のルーツは、1815年頃、プロシアの陸軍元帥だったゲプハルト・レベレヒト・フォン・ブリュッヘルが軍靴用に考案し「ワールテローの戦い」で使用したのが起源であるという説があります。
「ブラッチャー」「ブルーチャー」と呼ばれ、「ブリュッヘル(blucher)」が英語読みされたのが由来となっています。
羽根が大きく開いて足入れがしやすく、素早い着脱ができます。
羽根で外側から足を包むような構造のため、あらゆる足のサイズに合わせられ、フィット感の調整がしやすいのも特徴です。

外羽根はブーツによく用いられる
軍靴として実用性を重視された作りとなっています。
ワークブーツやチャッカブーツなど、ガッチリとしたブーツによく使われる形状です。
外羽根にも、羽根を開いたときに一番負荷がかかる部分に「閂(かんぬき)」という補強縫いがされています。
内羽根は閂が1箇所ですが、外羽根は閂が左右にあるため、負荷が分散されより丈夫な作りになっています。
外羽根の閂は、四角く縫われているものが一般的ですが、靴によって縫い方が異なっているものもあるので、選ぶ時に閂をチェックしてみるのも面白いですよ!
内羽根と外羽根、まず1足買うならどっち?

「まず1足」としておすすめなのが、外羽根・黒のプレーントゥ
『「内羽根」と「外羽根」どちらを選べばいいか』は人によって答えが変わってきます。
ですが、「まず1足、どのシーンでも使えるものが欲しい」なら黒の外羽根のプレーントゥがおすすめです。
黒のプレーントゥなら、カジュアルシーンはもちろん、シンプルで装飾感も少ないため冠婚葬祭などフォーマルな場面でも合わせられます。
また、外羽根はサイズ選びもしやすいため、初めての1足にぴったりです。
内羽根・外羽根の羽根の開きについて
木型やシューツリーが入った状態の革靴と、実際に履いた革靴では「羽根の開き具合」が変わってきます。
購入前のフィッティング時には、羽根の開き具合もサイズ選びの基準となるため、確認しておきましょう。
革靴の羽根の開きはどれくらいがベスト?
羽根の開き具合にはっきりとした正解はありませんし、理想的な羽根の開き具合は好みの個人差があります。
一般的には、フィッティング時に内羽根も外羽根も8mm~1.5cm程度で少し開きがある状態が良いという意見が多いです。
本革で作られた靴は、履いているうちに足に馴染んで革が横に伸びていくので、羽根の開きも履いているうちに徐々に狭くなってきます。
フィッティング時に羽根が8mm~1.5cm程度開きがあると、足に馴染んだ時に羽根が重なることなく、紐でサイズ調整ができる状態をキープできます。
フィッティング時に「ピッタリ閉じる状態」はNG
購入前のフィッティング時に、羽根が「ピッタリ閉じる状態」は避けましょう。
最初から羽根がピッタリ閉じていると、履いていくうちに革が伸び、左右の羽根が重なるようになってしまいます。
羽根が重なると紐を締めてフィットさせることができなくなり、オーバーサイズの靴を履いている状態に。
靴の中で足が動いてしまい、痛みや変形の原因となります。
開きすぎはシルエットが崩れて見た目が×
反対に「羽根が開きすぎ」の状態もシルエットが崩れてしまい、せっかくの靴のデザインが台無しになってしまいます。
また、羽根が開きすぎているということは、サイズがきつく足にあっていない状態ともいえます。
内羽根・外羽根の革靴を購入する際は、かかとやボールのフィッティング具合だけでなく、羽根の開き具合もチェックしてサイズを選びましょう。
羽根の開き具合についての考察
アメリカ靴の場合、羽根が開いたデザインになっているものが多く、羽根が閉じてしまうのは見た目が良くないと考えられているようです。
反対に、イギリス靴の写真を見ると、羽根がピッタリ閉じた状態で撮影されているものが多いように感じます。
また、内羽根の羽根の開きについては「閉じているとダサい」という意見もあり「ピッタリ閉じているのがカッコイイ」という意見もあります。
これに関して、個人的な推察ですがイギリスの王室がルーツの内羽根は、ピッタリ閉じて履くことが基本だったのではないかと思います。
元々は王室の方が履かれた靴ですから、もちろんオーダーメイドで足にぴったり合う靴が誂えられ、紐がなくても良いくらいフィットしていたはず。
そして、シンプルなフォルムが上品で格式高いとされていたなら、羽根もピッタリ閉じていたほうが、無駄のないスッキリとしたフォルムになりますもんね。
対して、靴に歩きやすさや頑丈さが求められたアメリカでは、外羽根で紐をギュッと絞って足に合わせるスタイルが主流だったのだと思います。
軍靴がルーツの外羽根は色んな足に合わせられるように作られているので、羽根がピッタリでサイズ調整できないよりかは、開き気味でギュッと締めてフィットさせられるほうが良かったのでしょう。
ただ、やっぱり内羽根にしろ外羽根にしろ、細かい開き具合に正しさや正解はないと思います。
足は時間帯や日によってむくみますし、羽根や紐は足に対応して紐を締めたり緩めたりできるという「機能」です。
そう考えると、昔から今まで形が変わらず存在する、とても機能美なデザインなんだと感じます。
その機能を利用してより足にベストフィットする靴選びをすることが、開き具合の見た目を細かく気にしすぎることよりも大事なことだと思います。
まとめ
内羽根と外羽根の違いや、シーン別のおすすめ、羽根の開き具合について解説してきました。
- 冠婚葬祭のようにフォーマル重視なら内羽根がおすすめ
- 脱ぎ履きのしやすさなど実用性重視なら外羽根がおすすめ
- 一足目の革靴としては黒の外羽根のプレーントゥが使いやすい
- 購入前のフィッティングでは羽根の開き具合もチェック
という4つがポイントでしたね。
内羽根と外羽根は革靴のなかでも人気がある形状なので、この記事を参考に、あなたの目的に合った1足を選んでいただければ嬉しいです。
また、この2つの他にも、モンクストラップ、ローファー、チャッカブーツなど革靴にはたくさんの種類があります。
それぞれの違いや機能については、【革靴の種類】の記事もチェックしてみてください。
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